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奥羽山脈の山塊と出羽丘陵に抱かれた横手市は山菜の宝庫。
今回のちょっといい、旬の物語は直売所のメンバー皆が認める山菜採りのプロ、雄物川地域在住の佐藤ミネさんにお話を聞きました。

 vol.3 やっぱり山が好き

佐藤ミネさんのお話
 ミネさんのご出身は、横手市増田地域。ご両親が山菜やキノコを採るのが大好きだったので、幼い頃から一緒に山に出ていたというミネさん。雄物川地域に嫁いでからも、趣味で山に出向き山菜を採って来ては近所の皆さんや親戚の皆さんへおすそわけしていたとのことです。
 雄物川地域の温泉施設、雄川荘にある「ほほえみ直売所」のメンバーとして山菜やキノコなど、山のものを中心に販売をはじめてから4年目になるそうです。

 山を見れば分かる熟練の視線

 「今では山を見ると、そこに何の山菜がおがって(おがって:育って)いるのかがわかるんだ。」とまず一言。
 山に育っている木も違えば、山の斜面の向く方角もまちまちです。標高によって気温も違うので分かるのだとか。さすがです。ミネさんが生まれ育った増田地域も奥羽山脈の山々が迫り、地元では「東山」といわれている山菜のメッカ。
 そんな環境の中で育って、雄物川地域に嫁いでからは、今度もまた山菜採りが大好きだった旦那さんとともに、地元で「西山」と呼ばれている出羽丘陵での山菜採りを一から開拓?していったのだそうです。
 旦那さんとともに行く趣味の山菜採りがオモシロくて、本当に大好きでしたが、旦那さんは17年前に他界してしまいました。
 それから数年が過ぎ、趣味だった山菜採りも、やがて地元の直売所の仲間と出会い、ミネさんが採って来た山菜を直売所に出すようになってからはお客さんができるようになりました。

 休むことも忘れるくらい

 「父さんはお茶っこが好ぎだったから、まず朝にお茶っこをお供えしてから山にいくんだ。だいたい5時どか5時半ごろには山に入るよ。」
 やっぱり朝早いですね~。朝の山菜採りは2~3時間ほどとか。この時間でミネさんは私たちには到底採れない量の山菜をゲットします。そして自宅に戻り、午前中に採ってきた山菜たちを選別・調整してから、ほほえみ直売所に届けに行くのだそうです。
 「そのあとは、また山さ行ぐんだよ。」
 山菜の季節になると、休みは無いそうで毎日、山へ出かけます。
「その時期は旅行するよりも、山さ入って山菜採っているほうがオモシェおん。(面白いもの)」
 ミネさんが山を大好きなのはすぐに伝わってきました。
 4月下旬からホンナ、アイコ、タラノメと。そしてゼンマイが終わると今度はミズやタケノコ。サクとウド。ワラビは5月になると採れ始め、娘さんたちが帰省してくるお盆にも、家族に食べさせたくてワラビを採ってくる。春からの山菜シーズンはお盆までのワラビ採りで締め。
 1ヶ月ほど休むと、9月中旬からは今度はキノコのシーズンがやってくるそうで、それからは雪が積もるまでキノコ採りに励むのだそうです。
 ちなみに、春の山菜の名前がたくさん挙がりましたが、皆さんイメージできるでしょうか?食べたことはありますか?どれもオイシイですよ!
ミネさんが好きな山菜は?との問いに「サクを煮付けたものが好ぎ。サクはみそ汁の具にも良いな。あどは生姜と山椒が隠し味のミズタタキだな。」と教えてくれました。さすが、なかなか乙な山菜の名前が出てきましたね。サクとミズ。

 全てが生き物なんです

 「山さ行って怖いと思ったごどはあまり無いな。山の奥に入って行ぐごどもないし。ケムシもヘビも怖ぐは無いよ。山菜を採ることを大変だと思ったこども無いんしな。」とミネさんは笑いました。
 ただ山を歩くのでは疲れてしまうでしょうが、山菜を探して見つけて収穫できた時の喜びと楽しみの方が大きいのだそうです。
 「健康のためにもなるべし。」そうなんです。ミネさんは元気そのもの。山を歩き回るのは容易なことでは無いと思いますが、山と山菜はミネさんの元気の源であるということは言うまでも無く伝わってきましたよ。

 ミネさん?昔の山と今の山、何か違ってきていることは?と聞くと、「昔は山菜でもキノコでもびっくりするぐらいおがっていたものだよ。今は道も良くなって、どこの山にでも入って行くことができるようになったし、 木も切られたりしているがら、山のものが少なくなってきてらがも知れねえな。天気も関係あるしな。」だとか。
 「ワラビも去年までおがっていだ所に今年は全ぐ出でこないこともあるんだ。場所が変わるっていうこど。山も年が経つにつれで変わる。山も山菜も生き物だし、動ぎがある。本当にオモシロいよ。」

 待っている人がいるから

 「明日は○○(場所は内緒)に、友達と共にタケノコ採りさ行ぐんだ。」とミネさんはすごく楽しみにしているように教えてくれました。
 「だって、お客さんがタケノコ無いか?と待っていでくれるもの。そうすればお客さんのために頑張ってこなければならないべ。」とミネさんは張り切ります。

 この取材の時に直売所にもご一緒することができました。ミネさんが納品したワラビはあっという間に売り切れてしまいました。直売所では地域のお母さん方との情報交換の場であり、この日も山の情報、旬のものの楽しいお話が絶えませんでした。
 「キノコが出てくるのが待ち遠しいな。キノコが採れるようになったらまた遊びにきてけれな。」とミネさんは笑顔で見送ってくださいました。
ミネさんはこれからもずっと元気に、山菜採りに励んでいってくれることでしょう。季節の便りを待ちわびる私たちのために。






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