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ホウレンソウは冬が旬の野菜です。今ではハウス栽培により、夏場の出荷も可能となっています。
今回のちょっといい、旬の物語はホウレンソウで県内一の生産量を誇る平鹿町ハウス団地組合長の伊藤博さんにお話を聞きました。
vol.4 野菜作りに恋をして
伊藤博さんのお話
7人兄弟の末っ子で生まれた博さん。末っ子といっても、上6人が姉だったので博さんは伊藤家の長男。博さんが5歳の時にお父さんが亡くなってしまい、 物心ついた時から農家を継ぐ決心がついていたそうです。
平成11年に、4名の仲間と共に「平鹿町ハウス団地組合」を設立し組合長になりました。 現在7名の組合員とホウレンソウ、小松菜、菌床しいたけの栽培をしており、東京、横浜、川崎などの首都圏を中心に出荷しています。
巨大団地
広大な敷地、そこに立ち並ぶ180棟あまりのハウス、そこに立つとそのスケールの大きさに圧倒されてしまいます。「伊藤博さんはいらっしゃいますか?」とハウスでホウレンソウの収穫作業をしている方たちに尋ねると、「博さん?どごさいるべな、しいたけの方さいるべがな。ながながつかまらねど。」この巨大団地から博さんを見つけるのは至難の業。困惑している私の顔を見て、「3時頃なら出荷作業に必ず来るよ。」と有力情報をくださった女性がいました。なんとその方、偶然にも博さんの奥様でした。
3時に再び出向くと、大きな2tトラックに、箱詰めされた小松菜の積荷作業をしている博さんと出会うことができました。やっと会えた嬉しさにちょっとした感激を覚えました。
「今日はぬぐいな。このトラックさ乗っていけば中は冷蔵で涼しいし、東京さ行けるど!いがねが?一度に300箱から600箱出荷する。 たまに嘘800なんてな!ハハハ…。」と日に焼けた顔が笑顔で輝いていました。
ほうれんそう名人と呼ばれて
博さんといえば「ほうれんそう名人」で有名です。でも博さんはこの呼ばれ方があんまり好きじゃないそうです。
「『名人』てその時一時のもので、永遠にずっと続く感じがしないんだよな。そこで終わっちゃうような気がして…。できれば『名人』よりも『ほうれんそうのがんばり屋』と呼ばれたいな。」
とにかく野菜作りが大好きだという博さん。その熱い思いは、博さんの表情や働く姿ににじみ出ています。きっと、ここで働く若者農業者はそんな博さんの背中を見ていろんな事を学び、いつか博さんを追い越したいという思いでがんばっているのだと思いました。
刺激のある人生
農業についてまじめな話をしているかと思えば、時折カラオケの話や酒飲みの話、そして何よりも映画鑑賞とショッピングが好きと語る博さん。
「農業をやっていれば、いい時もあれば悪い時もある。几帳面さと楽天的部分がないと続かない。ひとつのことに偏ったらダメ。いろんな事をキャッチするアンテナを立てていないとね。それを感性で受け止める。農業は感性とセンスが大事!」
これまで農業を続けてきた道のりは決して緩やかではなかったはず。でも、伊藤さんはピンチの状況に立たされたときでも、「どう転んでも結果を出したい」とチャレンジ精神で乗り切ってきたそうです。良いこと悪いこと全て自分に対しての刺激と受け止め、働いていく上での元気の源にしてきたのです。 野菜作りは難しい。けれど、目標を乗り越えた時、とても幸せな気分になるんだそうです。
「ホウレンソウに、オレが付けだ名前知ってるが?『芳恋草』かんばしいこい…いがべ!」とにっこり。「とても女性的で繊細な名前ですね。」と言うと、んだべ、んだべと大変ご満悦そうな様子でした。
今年還暦を迎える博さん。若いものにはまだ負けられねえと意欲満々です。これからも様々な刺激を受け、より安心・安全・おいしい野菜を創造し、横手から元気を発信し続けてくださることでしょう。『芳恋草』と書かれたホウレンソウには、博さんの元気が凝縮されています。今日も日本のどこかで、博さんのとびっきりの笑顔が浮かんでくるような甘~いホウレンソウが食べられていると思うと、なんだか私までうれしくなりました。