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横手市は県内トップの収穫量を誇るリンゴの産地です。
記念すべき第1回目は、横手市増田地域で、リンゴ果樹園を営む藤原隆行さんにお話を聞きました。

 vol.1 樹齢80歳のリンゴの木と共に

藤原隆行さんのお話
 高校卒業後、秋田県果樹試験場において3年間研修を受けた後にリンゴ農家となりました。 5年前に地域14戸の農家の仲間と共に「増田出荷会」を立ち上げ、会長として頑張っています。増田出荷会は、高品質なリンゴを生産できるよう勉強を重ね、国内販売はもちろん海外にまで販路を広げています。今シーズンはタイ、ドバイ、シンガポール、台湾でも販売されます。

★減肥料・減農薬で安全、安心なリンゴ。りんご一筋 藤原果樹園
藤原果樹園ホームページ

 

 手が物語るもの

 藤原さんは作業しながらインタビューに応じてくれました。藤原さんの手が目に入りました。肉厚で、少々ごつい感じはするものの、リンゴを持つ手はやさしさそのもの。「なんだか小汚い手だべ」と本人は謙遜。しかしながらガサガサした指先は、並大抵の努力では、リンゴを育てることはできないことを物語っていました。作業の手を止め、作業小屋に設置している石油ストーブに火を灯し、逆さにしたコンテナをいす代わりに「座ってしゃべるが」と藤原さん。

 「自然に左右されるのが果樹作り。天気は誰も操作できるものではないので、我々育てる人は、気持ちをどっしりとかまえて、最善を尽くすほか無い。でも心配!」たしかに、果 樹は、大風・降ひょう・干ばつ・大雪などが大敵。作柄の良い年もあれば、収量 のやや落ちる年もあるのが当然です。「山あり谷ありという条件を乗り越えて、収穫した時は本当におもしろくうれしい。」自然と真っ向から勝負するのが農業なのだと。

 ニンマリ笑顔が素敵です

 藤原さーん。このリンゴ誰が食べるのかって想像したことある?と質問したところ、2.5秒の沈黙ののち、藤原さんの表情は一気にほころびました。
 藤原さんは毎年約65tものリンゴを生産しているそうです。取材している作業小屋を見回してみました。高く積まれたリンゴの箱がたくさん。このリンゴが出荷され、お客様まで届けられ、美味しく食べていただいているのだろうと考えれば、こちらまで嬉しくなるような心境になりました。

 食べものとなるものを育てて、お客様までお届けするのが農業。考えてみるとお立ち台の上からお客様に笑顔をお届けするスターみないな存在ですよね。藤原さん?と話すと「俺なんか、増田小学校の3年生のスーパースターだで!」なんだとか。どうやら先日、小学生70人余りが社会科学習の一環で藤原さんの農園を訪れたらしく、リンゴについて詳しく事前学習した小学生から質問ぜめにあったとか。横手市は身近な自然のなかで体験学習ができる環境があります。きっとこの学習もよい思い出にになったのではないでしょうか。

 80歳のリンゴの木

 「リンゴの木は、それ自体が命を持っている生き物。我が子のように手を掛けてやらなければ、良いリンゴはでぎねんだよな。樹木1本1本に特徴がある。それを全部把握してら」

 藤原さんの農園では、500本あまりのリンゴ樹木が生きているのだそうです。それを剪定や摘果、 農園の管理作業と収穫。リンゴは一年中を掛けて育てていく必要があります。そうです、農業は生き物を育て上げる仕事。お客様にお届けする食材も、命を持って生まれてきているものなのです。それをどのように育て上げるかは藤原さんのお世話次第なんですね。

 藤原さんの農園の一番古い木。推定樹齢80歳のリンゴの木に、今年も500以上の真っ赤な実を稔らせたそうです。その樹木を植えたのは、先々々代。「リンゴは今日明日で実をつけるものではない。ひいじいさんと一緒にリンゴを作っている感じがするな。」と藤原さん。藤原さんが就農して初めて植え付けたリンゴの樹木はまもなく15歳を迎えます。その樹木もきっとこれから先、何十年後にも真っ赤な実を稔らせていることでしょう。

 元気を出して挑戦していく

 農業の衰退が日本のあちらこちらで叫ばれています。横手は、古くから第一次産業が主体なため、例外とはいきません。「そんなときこそ元気を出して頑張ろうで」横手の地の利。日本最大の盆地「横手盆地」に位 置しており、幸いにして災害も少なく、天候も安定しています。「有利な条件は揃っているのだから、あとはお客様のニーズに答えながら、日本一のリンゴ作りしでーな。」と頼もしく語ります。

 今年、増田出荷会の藤原さんを含めて会員4名が秋田県内初となる「JGAP認証」を取得しました。これは、安全・高品質な農産物を消費者に届けるとともに農業生産による環境負荷の低減を目的とした認証制度です。「わたしたちのリンゴを食べていただくお客様への安心・安全の提供はもちろん、このような取り組みを他の農業者にも広く知ってもらい、普及にも繋げたい」と語る。「今年認証を取得したが、継続していくには努力が必要。これからも頑張るべ。」この取り組みが先駆けとなってほしいと私たちも願っています。

 今後は、食品加工分野にも挑戦していきたいし、まずはホームページを立ち上げたいと今後の目標を教えてくださいました。果樹はたくさんあれど、 リンゴ一筋直球勝負の藤原さん。藤原さんたちのさらなる挑戦は、始まったばかりです。今日もどこかで、藤原さんのリンゴがお客様の美味しい笑顔を誘ってくれていることでしょう。

 おいしいリンゴの見分け方「サンふじ編」

◎ リンゴのお尻の部分(下底部)が透き通 ったように黄色がかっている。
◎ 指でたたくと「コンコン」と締まった音がする。
◎ 全体の果皮がつるつるしていない。(微妙に凹凸があります)


 藤原さん曰く、これがおいしい見分け方だそうです。リンゴを手にする側は気になるところ。今度ぜひ試してみてください。選別 の作業をしていた藤原さんが見せてくださいました。「ほら、これも美味いべおん。(秋田弁訳:べおん=だろう)あ~こっちも美味えべおん。ほら!」と。藤原さん、全部じゃないですか。






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